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− 第3回ブックレビュー
更新: 2004年10月3日  


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お知らせ

2004.10.3 第3回ブックレビュー: Postfix詳解 ―MTAの理解とメールサーバの構築・運用― のレビュー記事を掲載しました。

レビュー対象書籍

このたび、Postfix詳解 ―MTAの理解とメールサーバの構築・運用― の著者の荒木様のご厚意により、 ブックレビュー用に2冊提供していただきました。この書籍をレビューア募集の 結果選ばれた方にお送りして、レビュー記事を書いていただきました。

レビュー企画にご協力いただきました荒木様およびレビューアの小笠原様、 高田様に感謝いたします。

レビュー募集書籍

ブックレビュー記事

小笠原 啓さん: 「現時点では Postfix 解説本の決定版」

本書は Debian JP Project プロジェクトリーダの著者が、過去の実務経験を 生かして記した Postfix 解説本です。

初歩的な情報から高度な話題まで、約 350 ページの中でメールサーバを提供 するにはどうすれば良いか、どう運用していくのかが実践的な視点から解説さ れています。

本書はその内容が豊富なだけでなく、主な解説には設定例やコマンド例が必ず 提示されていたり、Postfix のバージョンによる差異(2.1 を含む)が随所で解 説されているなど、とても丁寧に作り込まれています。

全体としても完成度が高く、現時点では Postfix 解説本の決定版といっても いいように思います。

メールサーバの構築・運用を実務としている方だけでなく、ネットワーク管理 者の方にもお勧めの逸品です。

ただ、入門向けの本でないことは確かですので、本書を読むときには別途入門 書も一冊用意しておくと心強いかもしれません。

本書の内容

本書は 5 部構成となっており、それぞれ以下のような内容となっています。

第 I 部では、電子メールシステム全体について解説されています。豆知識と して意外と面白い事が載っていますので、読み飛ばしてはもったいないと思い ます。

第 II 部では、Postfix を用いたメールサーバの構築・運用に必要な一通りの 情報が提供されています。インストール・バーチャルドメイン・ログ管理・エ イリアス・.forward・アドレスマスカレードなどがキーワードとなります。

第 III 部では、Postfix の仕組みがメール配送の流れ図を使いながら解説さ れています。

各種設定項目の意味を正確に把握するには、各デーモンの動作を理解しておか なければなりません。その意味でも、この部の内容は大変参考になります。特 にメッセージキュー管理については詳しく、一読の価値があると思います。

第 IV 部では、spam 対策として、不正中継対策・ブラックリスト・メッセー ジフィルタの 3 種類の対策が紹介されています。

不正中継対策として、SMTP 利用制限の設定は基本なのですが、その正しい設 定方法は意外と複雑です。本書では流れ図を使った解説があり、視覚的にも分 かり易くなっています。

第 V 部では、様々な話題が扱われています。主なキーワードだけ列挙しても これだけあります。

項目が多いだけに個々の話題について少し物足りない部分もありますが、配送 の高速化やファイルロックに関する解説などは、かなり詳細にまで立ち入って います。

メールサーバとセキュリティ

メールサーバをインターネットに向けて公開すると、とかくセキュリティが気 になります。公開はしたけれども、本当に正しい設定なのか自信が持てない場 合もあるかと思います。

最低限チェックする項目として例えば、

といった点が挙げられます。本書では、不正中継の対策に 1 章まるごと割か れていますし、その他の 2 点についてもきちんと言及されています。

セキュリティの向上を目指して専門書を読んでみたものの、抽象的過ぎて役に 立たないと感じている人などには、特に本書が参考になるのではないかと思い ます。

結び

褒めちぎった評価を書いたので、偏ってないか? と疑われるかもしれませんが、 正直かなりいい本です。

実は私も社内ネットワーク管理者の一人として Postfix によるメールサーバ の運用に関わっているのですが、今後はこの本を参照しながら、より適切な運 用を心がけたいと考えています。

最後に、今回ブックレビューの機会を与えてくださった JPAG 主催者の方々、 そして本書を提供してくださった著者の荒木様に感謝の意を表したいと思いま す。


高田 敏昭さん: 「ある程度サーバの運用経験を持つ人にも十分に役立つ内容」

0.Postfix以前〜最近まで

Linuxをいじり始めて10年近いが、師匠と仰いでいた人の影響と、 SLACKWARE+PJEをいじっていたこともあってか、「メールサーバと言えば sendmail」という印象が強く、メインのディストリビューションが変わっても、 6年前に自宅にサーバをたてた時点では、当然のようにsendmailで構築した。 sendmailが8.9系と8.10系に枝分かれした時期に、設定やsendmailから移行が 容易であったPostfixを使い始め、現在に至っている。

1.本書全体の印象

メールシステム全般の説明から入って、

などを、判りやすい文体で説明しているため、容易に読み進めることが出来た。 章立てもきちんとしてるため、自分の必要とする章から読み始めても、すんなり と読み進められると思う。

自分にとっては、Debianを使っていること、Postfixを既に2年間運用している こともあったので、インストールや基本的な設定に関することよりも、spam 対策に関連する記述について期待をしていたが、第IV部、中でも smtpd_*_restrictionsに関する解説が期待以上に判り易く、かつ詳細に書かれて いたことが、大きな収穫だった。第14章にあるsmtpd_*_restrictionsとそこに 設定の出来るパラメータや、バージョンとの関係を整理した表を参照しつつ、 自分の運用しているメールサーバでのsmtpd_*_restrictionsの設定を実際に 見直した結果、spamのブロック率が多少向上したのか、SMTPコネクションの 時点でのrejectが増加している。

2.誰が読むべきか?

本書の約4割近くが、Postfixについての基礎的な内容になっている部分だけを 見ると、Postfix初心者やこれから使ってみようという人向けのようにも 思えるが、5部構成のうちの1部を不正中継対策に割いていることから見ても、 初心者だけでなく、ある程度サーバの運用経験を持つ人にも十分に役立つ内容に なっている。僕のようにネット上の情報だけでPostfixを設定したが、いまいち 設定に自信が持てない、と思っている人にとっては、リファレンス代わりに 持っていても損はないであろう。

最後に、本書のレビューの機会を作って頂いた関係者諸氏に感謝します。



ike@kobitosan.net